ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

クライシス

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あらすじ

「思いやりの限界」

 

 ある日、BC兵器を用いた爆破テロが発生。当局は感染を防ぐために市民は家に退避して感染者と接触するなと放送を流す。テロに巻き込まれウィルスに感染した妻に対して、未感染の夫はどう接するのか…。これが本作の舞台設定である。

 

 夫は妻の入室を拒否して、しかるべき医療措置がなされるのを待つことにする。彼はドア越しに妻に語り掛ける。「愛してるよ」「きっと助かる」「キミのそばにいるよ」、これら安全圏からの物言いがどれほど空虚であるかはいうまでもない。

 

 夫が妻を見るとき。それは窓枠やダクトテープによるフレーム・イン・フレームの構図をとる。フレームの中で小さく映る妻はまるでどこか遠くにいるような存在だ。それはまるでテレビ越しに第三世界の難民を見ているような気分を引き起こす。

 

 危機にあって、人は自分の安全を第一に考える。窮地での人と人との共感なぞ幻想だと、本作の主張はこんなところだろう。人は自分を守るために他者を見捨てる、かと思えば安全圏の確保さえ済めばそこから偉そうに思いやりを射出する。

 

 携帯電話を通じて行われる妻と彼女の母親の会話も、安全圏からの一方的な暴力だ。感染し、半ばパニックに陥っている妻に対し、彼女の母親は医者に行けだのなんだの意味の無い助言をプレゼントしてくれる。そんな低レベルな提言が何の役に立つかなど考えるまでもないことは自明である。しかしならばその発言は何に後押しされて撃ち出されたのか。それはただの自己満足、私はやれるだけのことはやったんだと。

 

 ラストは一転。妻が投薬により治療を受ける一方、軍人が夫に「お前の感染レベルの方がやばい」と告白。感染を防ぐためという錦の御旗を掲げた軍は彼の家に毒ガスを注入、夫はあっけなく死亡する。

 

 ヒステリーを起こした妻が家の中に強行突入してくるかもしれないというサスペンスを漂わせながら送る95分はそれなりに緊張して見れた。500円という値段に相応な満足度。ワゴンで見かけたら購入して損はない作品だ。

 

 

総合評価・星3つ(500円の価値有)

★★★☆☆

 

以上