ワンコイン・ムービ-レビュー

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ラッツ

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あらすじ

「ニューヨークの地下で突如、異常繁殖したラッツの大集団。ヤツらは高級デパートを手始めに、マンション、地下鉄、屋内スイミングプール、バスをも侵略し、瞬く間に人間を餌食にしていく。さらに、ネズミ特有の病原菌まで蔓延し、未曽有のパニックに陥るNY。今まさに“史上最悪の殺戮生物”と人類による存亡を懸けた闘いが始まろうとしていた!(パッケージより抜粋)」

 

 地下鉄の車両に閉じ込められた乗客たちがネズミの大群に襲われるシーンだけはまあまあ良かった。閉所恐怖症の方なら、そうでなくとも暗い地下鉄の狭い車内でネズミちゃん達とRendez-vousなぞたまったものではないだろう。乗客の1人がパニックに陥り護身用拳銃を乱射するもネズミの数が多すぎて意味ねえじゃんシーンと車両の下に潜り込んだ運転士のオッサンが体中ネズミに覆われて死亡するシーンは本作の双璧といっていいだろう。

 

 さて、本作の特徴を述べよう。それはせっかく用意した設定をフルスイングでドブに投擲していくスタイルである。「ネズミは病原菌を保菌している!」、登場人物がこう語った時、医療機関という人間社会の重要インフラの崩壊を描くことでネズミの脅威が示されるであろうことが予想された。しかし描写は「感染者がいっぱいだぜ!」というアナウンス一言で片づけられる。疑問符は始まりに過ぎなかった。

 

 主人公である害獣駆除業者のオッサンはネズミを駆除するために大規模な作戦を提案する。しかし衛生当局は「商業祭があるから無理」と難色を示す。なるほど、経済優先主義により市民の生命を危険にさらす人間の愚かさを描くつもりだな?と考えたのもつかの間、商業祭の描写は皆無である。衛生当局は続ける。「もっとしっかり調査してからでないと駆除はできん」。なるほど、官僚機構の動きの遅さを指摘しているんだな?と考えたのもつかの間、対応が遅れたことによる被害はゼロである。

 

 ネズミの脅威、人間の愚かさ、それらを描写するチャンスをことごとく逃したあげく、代わりに撮影されたのは画面いっぱいのネズミのみ。「いっぱいおるで!どや!怖いやろ!」、これで88分押し通そうとは猪武者もいいところである。時限爆弾でネズミを爆殺するという粗略なラストが、良くも悪くも本作を象徴していると言えよう。

 

 

総合評価・星2つ(500円の価値無)

★★☆☆☆

 

以上