ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

44ミニッツ

f:id:public-technocut:20190116210859j:plain

あらすじ

「1997年2月28日、ハリウッドの銀行が襲撃された。マシンガンで武装した2人の強盗VS拳銃しか持たない50人の警官。そして男たちの勇気が試される44分間が幕を開けた!!(パッケージより抜粋)」

 

 本作は事実をベースに作成された映画の1つである。ベースになった事件について知りたい方は「ノースハリウッド強盗事件」でグーグル検索すればいいだろう。この事件の特徴は強盗犯の行使した圧倒的火力である。では本作はそれをどう描いたのか見てみよう。

 

 強盗犯のアサルトライフルの制圧力は凄まじい。防弾加工が施されているはずの分厚いアメ車のパトカーのドアやボンネットが、音速を超えて飛翔する暴力群によって穴あきチーズにされてゆく。全身を防弾装備で覆った強盗犯たちはまるでタイラントの様に悠然と直立し乱射する。警官の反撃は無いも同然だ。彼らの放つ9mmパラベラム弾はドングリをぶつけた程度の衝撃しか強盗犯にもたらさない。

 「防弾装備で覆われていない頭を狙うんだ!」ピストル狙撃の難しさを知っていればこの発言がある種の絶望であることがわかるだろう。防弾装備で着ぶくれした犯人の胴体にちょこんと乗っかっている頭の小ささが、視覚的に狙撃の困難さを理解させてくれる。

 

 ところで本作においてはスローモーションが乱用されていることを述べねばなるまい。しかも何故か強盗犯の発砲シーンにのみそれは使用される。犯人の銃撃が「ド、…、ド、…、ド、…」とスローモーション化される一方で、警官の銃撃は通常速度で「パパパンッ!」と威勢よく響く。そこでは連射速度において警察が優越するという火力の逆転現象が発生しているのだ。無意味に強盗犯の脅威を減殺するこの描写には閉口するしかない。

 

 乱用といえばクローズアップもそうだ。本作ではだれかれ構わず顔面を大写しにしたがる癖がある。おそらくは現場警官の正義感への親近感や、戦闘への没入感を煽ろうとしたのだろう。それは確かに部分的には成功している。現場で部隊配備の任につく指揮官の険しい表情、荒れ地の畑の畝の様なシワ…。しかしこれは例外である。大抵は事件と無関係の主婦や少年の毛穴を映しているだけだ。そんなことして何になるのか。ビオレママにでもなるつもりなのだろうか。

 

 TVドキュメント的な挿入シーンも問題である。それは世界丸見え!テレビ特捜部などでよくある「あの時私は死を覚悟しました」とか「もう2度とブランコでふざけたりしないよ」といったシーンである。いうまでもなくこれはセリフで説明しすぎ現象を引き起こすことになる。非常に説教臭い。せめて語ってくれるのが事件の当事者なら価値もあっただろうが…。

 

 世界まる見え!テレビ特捜部の再現VTRとしてなら本作は及第点だろう。しかし映画として見ると、残念ながら一歩及ばずである。

 

 

総合評価・星2つ(500円の価値無)

★★☆☆☆

 

以上