ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

ヒューマン・ボム

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あらすじ

「国家に消耗品として使われる兵士の悲惨」

 

 “人間時限爆弾と化した元海兵隊員の孤独な闘いがはじまる!!”“秘密情報機関の謀略を描くアクション・スリラー!!”あげくにこのパッケージである。本作をハイパー低偏差値映画と思い購入した私に非があるだろうか。配給会社はクソである。本作はあらすじに書いたとおりの真面目な反戦映画であった。

 

 イラク戦争アメリ海兵隊の大尉として従軍した主人公のオッサンが、ウィルス兵器に感染し、帰国後バグってあばばばばというのが本作の表面的な設定である。しかしながらこのウィルス感染については事実では無いと考えられる。もしウィルスに感染していたとするならば、感染から帰国に至る過程でパンデミックが発生していなければおかしいのである。よって主人公の主張する「ウイルスのせいで記憶が飛んだり認知がおかしくなったりするんや」というのはPTSD等の精神的な症状と捉えるべきである。

 

 これを踏まえた上で筋を整理しよう。部下をIEDで殺された主人公は責任を取らされ不名誉除隊になりPMCに転職する。そこでさらに少年兵を射殺するトラウマを負う。その際受けた手榴弾による傷で帰国。平和に暮らせると思ったのもつかの間、自らの不注意による自動車爆発事故で一人息子を失い離婚するはめに。ここから妄想タイムを挿入しつつ元妻とその彼氏、コンビニ店員を殺害し、精神病院に送られてバッドエンド。

 

 上述した筋の元、バグった主人公が警察官と話したりオッサンと話したり幻覚を見たりして、何が本当なのかわからないのよぉんと悩む映像が87分。その中で注視すべきは美術である。特に大きく用いられているアイテムは星条旗である。荒れ果てた主人公の汚部屋にデカデカと貼られたそれは、国のために戦いボロボロになってなお国を捨てられない、あるいは国にしか縋れない哀れなパトリオットの感情を表している。この旗を背景に部屋でわけのわからない会話をするシーンは、国家=自己の崩壊を描いている。

 

 星条旗は警察の取調室でも用いられている。それは一段高い場所から、微笑むブッシュ(子)元大統領の写真と共に主人公を見下ろす。この場で主人公が精神病院への送致命令を受ける様がどう映るかは自明だろう。

 

 除隊帰国後に主人公が携帯するのはベレッタ92F。この銃にM9の名を与え正式採用しているのはどこの国かを考えれば、その暴力性は理解できるだろう。ガソリンを持った僧侶まで出てくる。ここまでくると狙いすぎでちょっと寒すぎると感じる。

 

 と、ここまで述べたように本作は「悲惨なオッサンを約1時間半見る」という中々悲しい映画である。悲しいけどクソ映画ではない。なのだから、こんなパッケージを作るなと、配給会社は有罪である。

 

 

総合評価・星3つ(500円の価値有)

★★★☆☆

 

以上