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宇宙戦争2008

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あらすじ

「地球人の血液が血清となることを発見した宇宙人により、地球は侵略を受け支配されてしまった…」

 

 本作は舞台設定の描写が上手くなされている。突然の宇宙人の侵攻、抵抗するも全く歯が立たない地球軍、降伏の条件は地球人800万人を生贄として捧げることである。降伏し、宇宙人の手先となり下がった地球軍兵士により生贄狩りが行われる。その様はゲシュタポKGBか。捕らえられた人々は宇宙船内で生きながらにして体を溶かされる。圧政と恐怖、絶望感を煽る演出が良くできている。

 

 主人公の科学者は、娘を生贄として奪われたため、レジスタンスと共闘して宇宙人と戦う。戦闘シーンは豊富であり、規模もそれなりで迫力がある。小火器をガンガン撃ちまくった果てのラストは、敵の技術を流用したレーザー砲で宇宙人のデススターを狙撃する回天の一射である。夜空に夢を追い求めるはずの大型天体望遠鏡が照準器として使用される皮肉も戦時に見られる一種のロマンスではなかろうか。

 

 本作は最初から最後まで真面目にしっかりとつくられた良作である。あえて言うなら、美術・小道具のレベルがその真面目さに追いついて行けていない部分が残念である。主人公が開発したレーザーガンは、どう好意的に見ても電飾で彩られたとんがりコーンであり、これを振り回す推定50代男性の絵面がどういうものになるかは想像にお任せしたい。宇宙人兵士のビジュアルも大概である。彼らはホワイトカラーのカジュアルフォーマルにリング状の光線銃を装備している。その姿は蛍光灯を握りしめたホテルマンの如しである。彼らがライフル持ったレジスタンスと繰り広げる銃撃戦のシーンはちょっとしたコメディである。

 

 ところで本作のラストではアナウンサーが視聴者にこう語りかける。「また同じことが起こった時、私たちはどうすべきか」。これは考えさせられる問いである。すなわち、人としての尊厳を守るために勝てないとわかっている戦争を絶望的に継続して軍民に多大な出血を強いるのか、または果てのない犠牲が出る前に降伏し、非人道的な800万の定量的な犠牲を甘んじて受けるかという選択である。

 

 私ははじめ前者を選ぶと考えた。同胞を守るべき軍が同胞に銃を向けるなど自己矛盾ではないか、最後まで抵抗の引き金を引き続けるべきだと。しかし視聴後しばらくしてシャワーを浴びているとき、疑問が再燃した。誇りだの尊厳だの言ってる連中に限って生き汚いものじゃないか、いざとなったら私なんぞ真っ先に逃げ出すんじゃないか。刹那、脳内で踊りが展開される。それは牟田口と芸者が奏でるハーモニー。上空では菅原道大が旋回している。ああ、私はおそらく後者を選ぶのだろう。レジスタンスに参加しなかった95%のフランス市民の様に。低予算映画で何悩んでんだお前と言われそうな気もするが悩んでしまうものはしかたない。これもまた本作が良作である証明ではないか。皆さんはどちらの選択を選びますか?

 

 

総合評価・星4つ(ステキやん?)

★★★★☆

 

以上