ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

オートマチック

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あらすじ

「ワゴンに埋もれていた傑作」

 

 私は疑わなかった。この映画はとてつもないアホ映画だと。「その男、自動拳銃と化す!」哺乳類がどうやって金属に進化するというのか。オートマチックというタイトルにしても、私の様なキモオタなら銃の事だとわかるが、大抵の人はAT限定免許と勘違いするんじゃないだろうか。オッサンがバグっているような絵面も合わさって、本作のパッケージは坂道発進ができずMT免許に落ち続けたオッサンが逆ギレしているようにしか見えない。

 

 しかし、とてつもないアホは私であった。本作の主人公は係長クラスの市役所職員。彼は共和国と市民のために働くという高潔な志を持って入庁した。しかしその職場はテルミドリアンの巣窟だった。市長は女性秘書を遊び半分でレイプしようとするクソで、抵抗されると秘書を殴り倒し小便をかける。その後始末は黒人移民に投げつける。市政運営においては悪徳業者と結託し、都市開発を私利私欲のために計画する。多額の献金を受け取り豪邸で優雅に暮らす。まさしくポール・バラスの再来である。市長に逆らえるものはおらず、むしろ彼に同調して私利私欲に走る職員ばかり。主人公も抵抗空しく朱に染まり、無気力な悪徳役人として生活する事になる。

 

 ある日、主人公は悪徳業者の化学プラント建設許可を不法認可する手続きのため現地に赴く。そして悪徳業者と書面を取り交わし、いつもの如く無気力に帰宅するはずだった。しかし、書面には主人公に記憶のない悪徳業者への宣戦布告文が挿入されていたのだ。彼は悪徳業者に詰め寄られ殴られ、説明を求められる。何が何だかわからない、

 

 そんな状況の中で彼の頭の中に声が響く。「私を手に取って」その声に従いアタッシュケースを開けるとそこには入れた覚えのないベレッタ92FSが鎮座していた。その銃は主人公の手に吸い付き、「私は銃、戦う覚悟は貴方の意志次第」と語り掛ける。主人公は半ばやけくそで拳銃を手に悪徳業者の私兵に立ち向かう。突撃銃やロケットランチャーで武装した私兵を瞬く間に殲滅し、悪徳業者に容赦なく裁きの銃弾を撃ち込む。

 

 戦いがひと段落した後、拳銃から事情の説明がなされる。拳銃になるまえの彼女は娼婦に堕ちた身であったものの、コツコツとお金を貯め、人生を再スタートさせようとしていた。そこにヒモとして利用していた糞男がやってきて彼女を射殺してしまう。しかし彼女の魂は拳銃として復活し主人公の手元へと渡ったのである。

 

 主人公と娼婦は意識の中で語り合う。「もし子どもの頃の私たちが今の私たちを見たらどう思うかしら」片方は悪徳役人、片方は娼婦。権力や階級社会によって弱者となってしまった彼らの悲哀はここで表現される。そして主人公は覚悟を固める。ちょうど市長からの呼び出しも受けたところだ。もはや恐れるものは無い。

 

 主人公は拳銃を手に市長と面会し、瞬く間に護衛のSPを処分する。そこからの銃撃戦は賞賛に値する。市長はSPの持っていた突撃銃を手に追いすがる主人公に向かって発砲しながら逃亡する。その逃亡過程では市長の選挙ポスターがバックに移される中、市民を巻き添えにしながら突撃銃を乱射する市長の下劣な逃亡劇が展開される。追い詰められた市長の演技力は素晴らしく、鬼のような形相で突撃銃を街中で乱射する。その銃撃シーンは、予算規模やキャストの知名度などを勘案すると、あの名作『HEAT』の銀行強盗からの逃走シーンに勝らずとも劣らずと言っても過言では無い。

 

 やがて弾切れに陥った市長は主人公に嘆願する。「俺には娘がいるんだ、見逃してくれ」貧困層をダニ扱いしてきた階級社会の腐敗者がよくもまあヌケヌケと言えるものかと呆れかえる。だが安心してほしい。主人公は市長の頭蓋に9mmパラベラム弾を撃ちこみ彼を粛正する。

 

 ラストは主人公が娼婦の銃と共にハイウェイを飛ばして終了である。個人的にはこのラストのみはあまり好みではない。この終わり方は続編があることを意識してしまうからである。悪党を粛正すると言っても限度があるだろう。市町村クラスならともかく、彼らがパリのGIGNを相手に闘えるとは思えない。私としては、あくまで地元の不正を粛正する使命を終えた彼等には、その街で安らかな最後を迎える散り際の美的ラストを迎えて欲しかった。しかし私ごとき浅学菲才の徒がそこまで注文をつけるのはためらわれる。

 

 本ブログは基本的に5段階評価で映画を評価している(ダストというクソ作品は除く)。捕捉説明にも書いてある通り、★1~4については星が増えるほど高評価。★5つについてはクソを極めた特殊領域として別格評価といった具合である。しかし本作については通常評価で処理するには余りにも惜しい。よって本作品の評価については敬意を払い、例外として以下の通りとしたい。もしワゴンセールや中古屋で本作を見かける機会があったら、購入して損は無いとここに断言するものである。

 

 

総合評価・星6つ(超魔生物ハドラー級)

★★★★★★

 

以上