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半グレ vs やくざ

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あらすじ

「どっちも死ね」

 

 主人公である「伝説のヤクザ笑」が出所してカタギになるんや宣言をするところから物語は始まる。彼は淫乱テディベアみたいなオッサンのバーで昼間から飲んだくれたり、ドブ川をぼけーっと見つめる有意義な時間を過ごす。カタギなるにあたっては「俺は焼き鳥屋を経営するんや!」とかほざきだす。貴様は飲食店経営をなめとんのか。普通にカタギにもどるなら刑務所にいる間にガンガン職業訓練受けて可能性を広げておく方がよっぽど現実的だろう。これだから口だけの中年オヤジは嫌なのである。

 

 伝説笑の引退後は半グレと呼ばれるチンピラが調子こいてヤクザのシマを荒らしていた。リーダーは金髪細身の筋肉質でかなりのイケメンである。半グレの侵攻に対してヤクザはスターリングラード戦でのルーマニア軍のごとく勇敢に立ち向かう。ヤクザは半グレに大した抵抗をしない。その代わりに伝説笑に対して「アニキ何とかしてえや」と頼むも「俺はカタギになるって言ったやろ」と何度も繰り返される戦闘シーンは「自分の手足を動かせ」というミストバーンの名言を思い起こさせる。よってここにヤクザ=ザボエラの連立方程式が完成された。

 

 ちんたらこいてる場合にヤクザの幹部は殺され、舎弟がかたき討ちに行くも返り討ちにあって殺される。なおこの舎弟はアホである。半グレの居場所や人数も把握しているのにたった6連発のリボルバーとナイフだけで突っ込んでいくのである。最低限半グレの3割を死傷させ、全滅に追い込むだけの予備弾は携行しておけといいたい。

 

 ついに伝説笑もキレてスタンガンで金髪を拉致、アルコールを静脈注射で流し込んでなぶり殺しにする。そしてラストの決め台詞。「テメエらみたいな奴らがいる限り、俺はヤクザを辞めねえ」。ヤクザは高潔なる治安維持組織であることが宣言された美しい詭弁の瞬間である。

 

 なお金髪については擁護の余地がある。彼の兄は地元じゃ負け知らずのヤンキーだったのだが、伝説笑にフルボッコにされたショックでシャブ中になってしまったのだ。金髪は叫ぶ。「お前らヤクザはシャブはご法度とか言いながら、普通にシャブを売ってるじゃないか!これのどこが任侠だ!」。全くもって正論である。惜しむらくは金髪が警察官にならずに半グレになってしまったところであろう。ヤンキーがノリで警察学校に行ったら叩きなおされて良い奴になったなんて話は別に珍しくも無い。ましてやシャブに恨みがあるなら麻薬取締部署への配属も夢ではないし、通常の警察活動でも職質でシャブを押さえることはできる。神よ、金髪の魂に救いを与えたまえ。

 

 本作で唯一勉強になったシーンがある。淫乱テディベアの店で伝説笑が「俺の親父は家族にすぐ手をあげる弱い者には強い女の腐ったような奴だった」と過去を語るシーンがあるのだが、テディは「女の腐った奴、それは男よ」と優しく伝説笑を諭す。今まで私は「女の腐った様な」というのは、陰湿なクソお局みたいな奴の事を言うのだとばかり思っていた。しかし身体的能力の優位性を武器に弱者を攻撃する行為も定義されるという視点は非常に興味深い。要は陰湿さに限らず暴力などの優位性をもって弱者を攻撃することが「女の腐った様な」と言いたいのであろう。

 

 一般常識からして他人に対して「女の腐った様な奴」と言って攻撃するのは不道徳であるが、DV男の様な真正包茎のチンカスに対して「お前は女の腐った様な奴だな」と相手の意表を突く軽蔑ワードを発見できたことは、男女平等の実現に向かう一歩として評価したい。

 

 

総合評価・星2つ(500円の価値無)

★★☆☆☆

 

以上