ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

GUN [ガン]

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あらすじ

「単純化しすぎてもダメな見本」

 

 刑務所から出所したゴワ髪のデブが、かつてのチンピラ仲間の黒人と銃を売りさばく。これが本作のおおまかな筋である。変な異世界観やクソみたいな理論を出さず、予算不足を承知した上の直球勝負で攻めて来るところは好感がもてる。舞台がデトロイトダウンタウンだったり、失業率の上昇がラジオで流れていたり、犯罪多発都市にもかかわらず警察予算が削られたり、ニュースで普段聞くような単語が出て来るというだけで安心する。少なくとも今回は波動だのパラサイトだのいう訳の分からんストレス要因はなさそうだということがわかるだけでワゴン界はパラダイスである。

 

 お話も順調に進んで行く。適当につくられたアホっぽいラップやヒップホップをバックミュージックにしながらメキシコのヤク中をブッ殺したり、組織を裏切ったデブを逆さ吊りにしてそのチンポを金属バットでめった打ちにしたりする平和な光景。もちろんお色気シーンもムンムンである。チンピラ黒人がブロンド白人美女と高級ホテルで激しくファック。これらの映像はヤンキーがイキがっている様で実に微笑ましい。苦言を呈するとすればファックのシーン、ここでは女優の体はあまり映らず、なぜかチンピラのケツ筋がクローズアップ現代+される。鍛えた黒人の肉体美は私も憧れるところではあるが、ケツだけ映されてもどうなのよと言いたい。これを撮影したカメラマンは略式裁判の後銃殺の名誉に値すると愚考する。

 

 しかし本作の重大なミスは行き過ぎた単純化、すなわち登場人物に個性が無いということである。まず主人公のデブは「黒人の誤射で妻を殺されていた事を警察から知らされ、スパイとして黒人に近づいた」という設定が用意されているが、特段妻への愛情や思い出が語られるわけでもなく、黒人の腰ぎんちゃくとしてプラプラ歩いているだけの量産型デブと化している。これを主人公と呼ぶのは無理があるだろう。デブを潜入させた警察サイドもお察しである。所轄のベテラン刑事はただの年配じいさんで、じいさんにイチャモンをつけてくるATFの捜査官の存在価値に至ってはナッシングベイベーである。

 

 唯一それなりに時間を割いて過去が語られたのは黒人のみ。ではここで彼の過去を聞いてみよう。「俺の親父はインチキ賭博の元締めをやっていたんだが、インチキがバレてチンピラ達に殺されたんだ。もちろん親父はチンピラ達の襲撃に備えて武器を持っていたが、それはオートマチックのピストルだったから負けたんだ。だから俺は決めた。オートマチックじゃなくリボルバーのピストルを持ち、ストリートで銃を売りまくってビッグになるってね。」

 

 頼むから人間に理解できる言語で説明してほしいと神に願ったのはもう何度目だろうか。何をどう考えたらその結論が導き出されるのか。悪いのはインチキ賭博をやってたお前の親父であってリボルバーとか関係ないし、ストリートで銃を売りまくってビッグになるとか言ってる時点でこいつの脳がスモールであることは確実である。

 

 本作を締めくくる銃撃戦のシーンはB級映画としては及第点のまともなものであった。デブの情報提供により警官隊が黒人の取引現場を強襲、ドンパチドンパチで黒人はムショ行きでDid the justiceである。

 

 言うまでも無く本作のタイトルはジャパン語で「銃」である。しかしその割には出て来る銃の名称がおもっくそ間違っているのが気にかかった。ロシア製の「サイガ12」は「セイバー12」とアメリカナイズされ、ベルギー製の「P90」は「PS9」と日本製ゲーム機のごとき名前と化している。いつの間にソニーはそこまで据置ゲーム機を進化させたのか。

 

 ただリボルバーリボルバーと壊れたラジオのごとく喚き散らすだけあって、黒人が装備する銃は世界最強の威力を誇る拳銃であるS&W M500の短銃身型である。観賞用や狩猟時のバックアップ用に作られたこの銃をコンクリートジャングルでドヤ顔かまして振り回す様は見ていて阿呆の様であるが、これぐらいは笑って許せる範囲であろう。

 

 最強の拳銃ってどんなんやねんと思われる方もいるだろうと考え、以下に本銃の動画リンクを貼り付けておく。なおこの動画内でも射手のオッサンが意味の分からないハイテンションぶりで銃を紹介しているので、なるべく温かい目で視聴することをお勧めする。

 

https://www.youtube.com/watch?v=kQv8_QKMwpM

 

 

総合評価・星2つ(500円の価値無)

★★☆☆☆

 

以上