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タイムソルジャー

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あらすじ

「頑張ってるのはエキストラだけ」

 

 ロシア人の学者2人が、独ソ戦の研究のために当時の戦場を再現するイベントに参加する。そこには半裸で銃を振り回したり、サッカーでヒートアップしたり、酒を飲んで生ライブでダンスを踊るなどして戦死者達への慰霊を行う礼節ある人々が集っていた。そこで出会ったウクライナ人のチンピラ2人は「くたばれロシアのクソボケ」と友好の挨拶と共に手榴弾を学者たちに投げつけてくれる。それが見事に戦時中の不発弾に誘爆して、4人は1944年にタイムスリップする。

 

 タイムスリップ後、ロシア人学者達は「俺達は以前にもタイムスリップした経験がある。戻り方も知ってるんやで」ほざき、「現代にどうやってもどるのか」という問題点を瞬時に葬り去る。その経験とやらを全く作中で説明しない所にナゲヤリというジャポニズムを感じつつ、じゃあさっさと現代に戻れよと私は思った。しかし学者たちは「以前タイムスリップしたときに出会った美女に会いたいから散策するで」と前線へと突っ走る。命より女が大事。三大欲求に性欲が入るわけである。理性を重んずべき学者が下半身に従って行動する様には人類の明るい未来が垣間見える。

 

 無事にその彼女と出会うことができたが、彼女はすでに結婚妊娠していた。そして学者達は彼女の旦那から、彼女の身の安全を託される。しかしそこにナチスの兵隊たちがヒャッハーしてくる。そこで彼女は産気づき、彼我入り乱れての乱戦の中でお産をおっぱじめる。

 

 ところで本作はBGMがあまりにも酷すぎる。前述のお産のシーンに加えて、ナチス兵から逃げるシーンでもアップテンポのバラードが挿入され、場の雰囲気を大いに台無しにしてくれる。あげく戦闘シーンに至ってはゲームミュージックレベルのハイテンションな曲調が凄惨な戦場の空気をコメディの様に変貌させる。よくわからないという方はYouTubeロックマンXのオープニングステージBGMを流しながらプライベートライアンのノルマンディー上陸シーンの映像を見ればどうなるか試してみて頂きたい。きっと理解して頂けるだろう。

 

 なんとかお産が終わってひと時ついた。そこで現代に戻る方法が明らかにされる。「来た時と同じだよ。爆弾で吹っ飛べば戻れるのさ」である。つまり敵の空爆もしくは味方の誤爆によってブッ殺されるのをひたすら待ち続ければいいのである。そんなものは断じて策とは言わない。しかしご都合主義のプロットにより主人公達はロケット弾の直撃を喰らって現代に戻ってハッピーエンドである。1944年で死ねばよかったのに。

 

 本作で唯一評価できるのはエキストラ達によって描かれる戦闘シーンである。ナチス兵の決死の急襲、混乱の中反撃するソ連兵。唸る機関銃に援護されながら銃剣を装着した兵士がしゃにむに進み白兵戦を展開する。互いにサブマシンガンで激しく撃ち合う様は迫力満点である。時代考証もしっかりしており武器も当時の物がしっかり再現されている。唯一ナチスの戦車だけが微妙であった。それはシュルツェンを車体に付けた4号戦車であるのだが、砲塔だけが何故か初期型で短砲身75mm砲を装備している。なんかおかしなパーツ編成だが実際に存在したのだろうか。砲塔が旧型で車体が新型というのは、砲塔が新型で車体が旧型という97式中戦車改に通じるものがあるので少しだけ興味深かったが、視聴者の多くにとってはどうでもいい事項であろうことは自明である。

 

 

総合評価・星2つ(500円の価値無)

★★☆☆☆

 

以上