ワンコイン・ムービ-レビュー

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ソード・ハンド 剣の拳

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あらすじ

「極北の大国に芽吹いた14歳脳のつぼみ」

 

 舞台はロシア。主人公は右手から剣を出すことができる特異能力の保有者である。彼はその能力を押さえるため「くっ、静まれ…俺の右手よ…」的な包帯を巻いている。なお包帯は全く意味を成していない。それどころか主人公はナチュラルにチンピラをしばきまわしたりする。

 

 そして主人公はある日、行きずりの人妻と何の脈絡も無しに恋に落ちてSEX三昧。隙有らばSEX、隙あらば肌をまさぐりディープキス。うっとおしいほど流されるこのお色気シーンからは童貞の妄想が榴散弾の様に炸裂している。しかし主人公は警察に追われる身となったあげく、運命の恋人を射殺されてしまう。怒りを爆発させた彼は右手の剣で警察部隊を薙ぎ払い、ヘリコプターをも撃墜する。ラストは海辺で彼女の亡骸を抱きしめて涙を流す場面の空撮でエンドロールである。

 

 さて、ここまで本作を好意的に俯瞰してみたが、実質本作はまともな作品とは言い難い。しょっぱなから30分程度は自然風景の中で主人公が黄昏るシーンが殆ど。主人公のイケメンぶりを強調したいのかもしれないが、私には「世界の車窓から」のツギハギシーンにしか見えない。

 

 戦闘シーンも悲惨の一言である。それは主人公が手を振るう→CGの木が倒れたり、人が血を吐いて倒れたりする、といったレベルの物である。右手から抜刀した主人公が激しく激剣を挑む様な迫力ある場面は皆無である。

 

 そもそも彼が警察に追われる羽目になった理由と言うのがクソすぎる。上述の通り彼は人妻とねんごろになる。それを知った人妻の夫は当然怒って友人と共に人妻に抗議する。もちろん感情的な抗議であり、そこには髪を引っ張るなどの暴行が含まれているためこの寝取られ夫を全面的に擁護する気は無い。しかし主人公は右手の剣で寝取られ夫とその友人を容赦無く急所をブチ抜いて殺害する。人妻を守るという目的のために力を使うなら、腕なり足なりを狙って戦闘不能にすればいいだけの話であろう。主人公の行為は「勘違い騎士道事件」など比べ物にならない愚かな過剰防衛である。この事件を受けて警察は動き出す。

 

 要約すると「主人公は人妻を寝取り、過剰防衛で複数人を殺害。真面目な警官をも攻撃する」というド屑である。せっかくの中二病設定台無しである。彼の逃避行を正当化することは私には不可能である。

 

 これらの多大な欠点を指摘しておきながら、私はあえて本作に分不相応な評価を与えたい。私は信じたいからである。後に続く人々の力を、人類の進歩を。ろくでもない作品であるこの映像から洗い出した欠点をフィードバックし、結果として未来においてより素晴らしい中二病がロシアの厳寒を暖めてくれる。その可能性を信じたいのである。それが実った暁には、この微妙な映画は、未来において人道的価値を認められるに違いないであろう。

 

 

総合評価・星4つ(ステキやん?)

★★★★☆

 

以上