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ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

グエムル 漢江の怪物

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あらすじ

「能力的には女子中学生が怪物」

 

 在韓米軍のある化学担当のオッサンが「毒薬とか劇物とかマジうざいから下水に捨てようぜ」と環境保護精神あふれる指示を部下に出す。部下は当然「下水に捨てたら漢江に流れ込んでしまう」と反論するが、オッサンは「川は広いからノープロブレムだよHAHAHA」と寛容の精神をもって部下に命令を下す。その後はセオリー通り、薬物の影響を受けたバケモノがめでたく誕生するのである。

 

 主人公は金髪デブのオッサンである。彼は老父の経営する川岸の小さな売店で居眠りする勤労中年である。いつものごとく客へのお釣りをちょろまかしたり、商品を盗み食いしていたら川からバケモノが襲撃してくる。バケモノは両生類の様なヌメヌメした巨体を俊敏に操りながら市民を喰い殺していく。グロテスクな牙で人間の半身に喰らいつき、尾で軽々と人を空中に投げ飛ばす。コンテナの中に避難した市民達に襲い掛かり、ドアを破り血しぶきと共に彼らを殺傷する様は恐怖感を煽るよくできたシーンである。この騒動の中、主人公の中学生の娘はバケモノにさらわれてしまい、政府から死亡者認定される。

 

 この悲劇を契機に家族達は集合する。主人公の弟は韓国民主化の際に学生運動をしていたが、そのせいで就職できずにフリーターをしている。妹はアーチェリーの国内有力選手である。主人公達一家はバケモノと接触した可能性があるため隔離措置をとられてしまう。そこに死んだと思われた娘から主人公の携帯に着信が!彼女は下水道内に囚われているとのこと。当局にそのことを説明するが「こいつショックで頭がバカだぜ」と一顧だにされない。あげく韓国政府は「なんかバケモノのウイルスとかいたらマジ怖いから軍と警察は撤退させます。後は民間の清掃会社に除菌を頼むんでよろしく」とアナルファックの様な論理的政策決定を下す。

 

 ここで老父パワーが爆発する。彼は何の脈絡も無くヤクザのツテを使って病院から皆を脱出させ銃を入手、区役所職員を黄金最中でねぎらい、規制線を超えることに成功する。その後彼らは必死で下水道を片っ端から捜索する。そしてバケモノとの対峙。散弾銃の連射でバケモノを追い詰めるも弾切れに陥り老父は死亡。弟妹は逃げきれたが、主人公は後からやってきた政府職員に捕らわれてしまう。

 

 本作はこの中盤までがおもしろい。迫力あるバケモノの襲撃シーン、これに対するバトルシーン。合間に主人公のデブを直接的・間接的にディスるコメディシーンも上手く挿入されており秀逸と評価するに値する。

 

 しかし本作はここから終盤にかけて無駄なシーンが多いように感じた。捕らわれた主人公が強制検査を受けるシーンは無駄に冗長、妹のアーチェリーは役立たず、弟は主人公の娘の居場所を突き止めることに成功するが、その際先輩に裏切られて追い回されるシーンに必要性はあったのか。あげく偶然出会ったホームレスが「ヒマだから」とバケモノ退治に協力してくれるという展開も不自然である。

 

 決戦は始まりの地、漢江。そこでは大正義米帝による対ウイルス兵器散布の準備と、これに反対する市民のデモ隊が衝突していた。当然ながらバケモノはアメリカも韓国も関係ない。こんにちはとばかりに川から襲撃をかけ殺戮を展開する。米軍は対ウイルス兵器を無差別投入。そこに主人公達3人が突入し、バケモノを倒すことに成功する。しかし娘は既にこと切れていた。その腕には彼女が守り通した少年が抱かれていた…。時は経ち、主人公は、娘が救った少年を養子として慎ましい生活を立て直している姿が描かれ本作は終了である。

 

 本作はB級モンスターアクションとしてかなり出来のいい作品である。バケモノの造形はグロテスク。キャラクターにはしっかりとした個性があり(アーチェリー妹を除く)、ストーリーもメリハリがついている。地味にすごいのは助けられる側の娘である。彼女は中学生でありながら「バケモノの襲撃を受けても精神的ダメージを受けずに」「不衛生な下水道内で水も食料も無い状態で数日間耐え抜き」「同じく捕獲された少年を守り抜いた」のである。私が彼女と同じ立場ならバケモノに捕まった瞬間にショック死するか、下水道の汚水で風邪をひいて死ぬかのどちらかになるだろう。

 

 もちろん設定のアラはある。漢江は首都ソウルを流れる川である。小学生でも知っている通り、韓国は北朝鮮と休戦状態にあり、ソウルは最重要防衛地域である。そこにバケモノが現れたにもかかわらず行政側の対応はノロマの一言。軍と警察を撤退させ民間企業に除染を任せるなど論外である。ネット上ではボロクソに叩かれている韓国軍であるが、彼らを現代史から俯瞰すれば、朝鮮戦争の血みどろの内戦を潜り抜け、ベトナム戦争では対ゲリラ戦で米軍以上の戦闘能力を発揮している。首都ソウルに潜伏するバケモノをブチ殺すのに彼ら以上の戦力はそう簡単に見つからないだろう。当然「マトモな対応したら主人公達が活躍できないじゃん」と言われたらそれまでなので私は簡単に論破されてしまうだろうが。

 

 しかし残念なことに本作をB級映画として楽しむには政治色が強すぎると感じた。悪辣な国アメリカの生み出した怪物により市民が殺され、韓国政府は無能。アメリカ軍が強制介入し、それに対して市民がデモを行い、米軍の兵器で巻き添えを受け被害を受けるというシーンは、私の様な無学の輩からみてもルサンチマンめいたものを感じざるを得ない。この点がどうにも払拭できなかったため、遺憾ながら星を1つ減らした評価とした。

 

 

総合評価・星3つ(500円の価値有)

★★★☆☆

 

以上