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ヒドラ

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あらすじ

ヒドラは主人公の味方でした」

 

 とある無人島で狩りが行われようとしていた。その獲物は犯罪者。ハンターは凶悪犯罪により家族を奪われた被害者である。これだけみればマトモな復讐劇に見えないこともないのだが、その内実はむちゃくちゃである。まず獲物として集められた犯罪者は4人。その内2人はレイプ野郎に飲酒運転殺人者というどうなってもいいゴミであるが、残りはDV夫によって心神耗弱状態に陥り銃で夫を殺害した女性と無実の米軍特殊部隊員である。特殊部隊員については企画者側の船長の個人的な恨みによりリストにねじ込まれたという実に正当な基準によって選抜されている。

 

 ハンター側にしても考え方が逸脱しすぎている。犯罪被害者という立場は確かに同情すべき境遇であるが、獲物として追い回す連中は別の事件で逮捕された連中であり、こいつらを撃ち殺したところで何の復讐にもならないという虚無感を覚えるしかないだろう。しかもハンター達は参加費として1,000万ドルを支払っている。その金を犯罪被害者支援団体や犯罪予防政策のシンクタンクに寄付した方がはるかに社会性のある行為であると断言できる。

 

 そしていよいよ島での戦いが始まる。犯罪者(半数だけ)VSハンターVSヒドラの三つ巴の戦いが始まるかと思いきや戦闘はいたって単純な構造を描く。パターンは2つ。1つはハンターが犯罪者を追い詰めるがヒドラが背後にワープしてきてハンターを殺し犯罪者は逃げる。もう1つはハンターがヒドラを見て「What is this?」と言い銃を撃つが効かずに喰い殺されるかである。

 

 そこに研究者を名乗る女性が現れて「ヘラクレスの剣でヒドラを倒すのよ」と実に現実的な助言を上申してくれる。普通の外人なら「こいつJRPGのやりすぎでバグってんじゃねえの」と無視するところであろうが、特殊部隊員は「ヘラクレスの剣だな。わかった。」と素直に洞窟の奥に進んで行く。いったい米軍の訓練体系はどうなっているのか不安を覚えざるを得ない。その後はヘラクレスの剣を手に入れヒドラをブチ殺して船で脱出。イタリアの港湾当局をワイロでたぶらかして平和に逃亡。物語は幕を下ろす。

 

 以下は私の拙い脳みそによる雑な考察である。ヒドラによって殺されたのはハンターと企画者サイドの人間だけである。これを「法による裁きを唾棄し、私刑に走った者への罰」と解釈することは可能ではないだろうか。私は親しい人間を犯罪で失った経験は無い。よってこれから述べることは所詮綺麗ごとでしかないのだろう。しかしながら犯罪を裁くことは社会契約によって成立した国民主権国家による正当な司法判断に基づかなくてはならない。この理屈を破り、私怨や感情論で殺害を行うことを肯定することは9月虐殺の再来である。本作はこの「法による正義」を強調するための作品ではないかと肯定的な解釈を考えてみた。

 

 でも絶対そこまで考えて作ってねえだろうなという蓋然性が凄まじく高いので、ここまでグダグダ書いて非常に申し訳ないが私の考察はおそらく的外れもいいところである。

 

 

総合評価・星3つ(500円の価値有)

★★★☆☆

 

以上