ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

ゾンビ・ナース

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あらすじ

「ゾンビじゃなくて悪魔じゃん」

 

 結婚について考え始めた同棲中のカップルが、車で移動中に交通事故に遭ってしまう。彼氏は救急車で搬送されるが、主人公である彼女は何故か同乗を拒否される。最寄りの病院に彼氏の収容状況について問い合わせるも、どの病院も「そんな患者は受けて入れていない」の一点張り。彼氏は一体どこに消えてしまったのか。煙に巻かれた状態で不安になる主人公。

 

 そこに突如悪魔のささやきが断続的に彼女を苦しめる。「彼は我々の物になった」「手を引け」「お前は我々の仲間だ」と異形の姿で現れて主人公を脅し、精神的に追い込みをかけてゆく。しかし彼女はあきらめず、彼氏が聖ローズマリー病院に収容されている可能性があることを突き止める。しかしその病院は数十年前に、悪魔崇拝を原因とする集団焼身自殺により崩壊しており現在は存在していない施設であることが判明した。

 

 だからといって退くわけにはいかない。主人公は魔界と化した病院跡地に突入し、恋人を助けるべく探索を始める。この探索シーンではアクションとよべるものは一切見ることはできない。主人公は小学校の教師であり戦闘経験は無く銃も持っていない。悪魔を見るたびに叫び声をあげて逃げるだけである。これを無力の恐怖と捉えるか、やかましいだけと捉えるかは視聴者次第だろう。ちなみに私は前者である。

 

 悪魔は主人公のトラウマをえぐり出し精神攻撃を仕掛けてくる。主人公のトラウマとは、かつて医療事故で寝たきりになってしまった父親の懇願により医療機器の電源を切り自殺幇助を行ってしまったことだった。それ以来病院嫌いとなった主人公であったが、恋人を助けたいとの一心でわが身を顧みず最終的に彼氏の救出に成功する。

 

 病院から脱出すると、時間は交通事故直後にタイムリープ。主人公は致命傷を負うが、自分の罪を償えたことと、恋人を守れたことの満足感に包まれてこの世を去る。

 

 本作は乳丸出しのろくでもないパッケージから想定される下劣な内容ではなく、なかなか重苦しいホラー映画として仕上がっている。登場してくるのがゾンビではなく悪魔であるのは御愛嬌といったところか。本作がゾンビ映画でない事は注意が必要である。

 

 本作の大きな欠点としては、最後の舞台となった聖ローズマリー病院の設定の作りこみの甘さであろう。本作ではこの病院は「悪魔崇拝をしてたら火事をおこしてみんな死んだ」ぐらいの適当な説明しかなされていない。カルト組織を描くのであれば、頭の腐ったカリスマ教祖やクソの様な教典といった、組織体系を描写する小道具は必須ではないだろうか。しかしながら本作の悪魔たちには何の個性も無い。パッケージ裏で「キャラ立ち系ブーム到来!」と煽っておきながらこれはいただけない点であると言わざるを得ない。

 

 もう一つは父親の自殺を幇助したことで悪魔たちに仲間扱いされている主人公についてである。父の庇護下にあり判断能力に劣る児童を責めるのは酷すぎはしないだろうか。この状況から判断するなら、児童であった娘に自殺の片棒を担がせた父親こそが親の責任を放棄した卑怯者として責められるべき存在ではないのだろうか。一部の州ではあるが、本作の舞台であるアメリカは自殺幇助が合法化されているところもある。それにもかかわらずのこの行動には納得がいかない。ただこれについては「父殺しのトラウマを背負うことになった娘が善行を積むことで救われた」という宗教的なテーマを含む可能性も捨てきれないので、宗教に無学な私が確定的に糾弾すべき内容ではないとの思いも捨てきれない。

 

 

総合評価・星3つ(500円の価値有)

★★★☆☆

 

以上