ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

センター・オブ・ジ・アース ワールド・エンド

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あらすじ

「地下って怖いなあ(適当)」

 

 転送装置によって、一瞬で兵士を世界各地に送り出すことが可能になった近未来。そこでは女性兵士のみで構成された6人編成の部隊がドイツに転送されようとしていた。彼女たちは未来の軍事組織らしい充実した装備によって強化されている。まず武器はアサルトライフルが2丁。後はピストルが4丁と潤沢の限りを尽くしている。その他装備もぬかりは無い。無線機にハイキング用のリュックサックである。彼女たちは軍人なのかハイカーなのか開始数分でわからなくなってくる。

 

 ところで軍人は、自分たちが「どこどこの国の軍人である」ということを証明して民間人と区別するために、識別がつくものを身に付けなくてはならない(参考:陸戦の法規慣例に関する規則 第1条第2項)。その代表例が各国の軍服であるが、彼女たちは軍服を身にまとっていない。グレーのタンクトップにブラックのズボンという姿はまるでファストファッション店のマネキンである。もちろん軍服を着ていなければ即違法というわけではない。軍服の代わりに腕章といった類の様々な識別手段が使用されることもある。詳しく知りたい方は「ホームガード」「国民突撃隊」「国民義勇隊」で検索することをお勧めしたい。しかし彼女たちは識別のつくものを何も身に付けていない。一応ドッグタグと呼ばれるネックレスの様な認識票は身に付けているのだが、こんなものは世界各国のまともな軍ならどこでも身に付けているものである上、民間でもアクセサリーとして普通に流通しているものである。

 

 端的に彼女たちの状況を表現すれば「国際法に違反したユニクロ装備の山ガールにチンケな銃を持たせて出撃」である。いろんな意味で末期である。いかなる擁護も不可能である。

 

 なんやかんやで彼女たちは転送装置に入るが、なぜか600kmの地下に転送されてしまう。そこには太古の世界が存在しており、隊員2人があっというまにティラノサウルスのおやつになった上に無線機がぶっ壊される。生き残った4人の隊員は素晴らしく的確なサバイバルライフを我々に教育してくれる。もってきた食糧が無くなったら「古生物学によると恐竜の肉はチキン味よ」とバグりだして小型恐竜を捕食する。巨大な化け物グモに挟み撃ちにされたら「ナイフで殺ったるわい」と雄叫びを上げる。なお、その戦闘シーンは0.1秒も描かれることは無い。「なんだかんだで無事やったわ」の一言で平然と帰ってくる女性兵士の姿を見ていると無の境地に一歩近づけた気になってくる。

 

 地下世界に転送されてしまった女性兵士達を救うために出動したコンビ(軍人のオッサンと科学者のオバサン)も魅力的である。なおこのコンビは別れた元夫婦という設定である。彼らはわけのわからん掘削機に乗り込んで「レーザーとパルスで地下へ掘り進んで行くわ」とかほざいて突っ込んでいく。掘削機内ではオッサンがグチグチと昔の話を持ち出してオバサンをいらつかせるという微笑ましいシーンが展開される。

 

 なんやかんやで掘削は成功、元夫婦コンビと生き残りは地上にもどってめでたしめでたし。

 

 と言いたいところであるが最後でも彼らは余りある知能の低さを披露する。今まで存在のわかっていなかった未知の地底世界から帰還したにも関わらず何の検疫も行わずに「イエーイ」とか言っている姿は阿呆の極みである。女性兵士の1人に至っては恋人とディープキスまでかましている。案の上、化け物グモの幼虫も地上に連れて帰ってしまったぜと不安をあおる画面で本作は幕を閉じる。

 

 本作の評価点は構成が巧みなところである。地下世界のシーンがつまらくなってきたら元夫婦コンビの掘削シーンへと場面転換、掘削がつまらなくなってきたら地下世界へと場面転換とそのタイミングは神の領域である。ストーリーや演技をゴミと認識する直前でシーンを切り替えることで、視聴者に苦痛を与えることなく最後まで作品を見させることを成功させた本作構成担当者のエスコート力はまさに賞賛に値する。

 

 「ウンコが臭ければ香水を使えばいいじゃない」この意味で本作はヴェルサイユ宮殿的にクソ映画を美化することに成功した作品であると評価できる。

 

 

総合評価・星3つ(500円の価値有)

★★★☆☆

 

以上