ワンコイン・ムービ-レビュー

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アルマゲドン2008

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あらすじ

「大型彗星がアメリカを直撃することが判明。NASAの下した決断とは?」

 

 本作はドキュメンタリータッチの構成をとって話が進んで行く。ところでドキュメンタリーというものは話が真実であればこそ訴求力があるものであると考える。もちろん映画がフィクションだからといってドキュメンタリータッチは駄目だなどと理不尽な決めつけをするつもりはない。しかし本作中盤までの約50分間はまさしく苦行としか言いようがない。「彗星は氷でできてるからめっちゃ早いぜ」「彗星に硫黄が含まれてたら氷河期になっちまうぜ」などという嘘か本当かわからない説得力ゼロの話題でオッサンたちが会議室でグダグダ話し続けるドキュメンタリー映像は地獄である。この間の映像は睡眠導入剤としてぜひ薬剤認可するべきだろう。また主人公のヒゲモジャデブは会議で自分の意見を否定されるたびに田舎の車道を全力疾走する。デブの醜い下腹が強調されるだけのこのシーンを何度も挿入することになんの価値があったのか理解できない。

 

 NASA核兵器による彗星迎撃案を模索するが「彗星が砕けて被害が広範囲になるだけ」と結論は芳しくない。最終的に選択された作戦は「何もしない」ことである。アメリカが犠牲になることで他国は救われる。よって避難民の輸送に全リソースを裂くべきだ、とのこの案に将軍は「自国を捨てるのか」と反対するが、科学者たちは硫黄島で戦友をかばって重傷を負ったジョージ・ルーカスの例を引き合いに出して「アメリカなら立ち直る力がある」と将軍を説得する。

 

 避難計画は採用、実行に移される。世界各国から動員できる船舶・航空機がフル活動しアメリカを救援に向かう姿はさながら現代のダイナモ作戦である。科学者たちは最後まで任務を果たし最終便で非難するが、将軍は自らライフルを手に取り、暴徒鎮圧のため最後まで闘いぬく。その後ろ姿には熱い男気を感じざるを得ない。本作は性善説に基づいた人類団結劇であり、後半は十分楽しめるものであった。それを踏まえて一考してみたいことがある。

 

 以下の文章は作品の評価に関係無い私の愚考であることをまず断っておく。本作でアメリカが犠牲になった後、世界はどうなるのだろうか?アメリカ人が生きていてもアメリカ本土のインフラが壊滅している以上復興への道のりは果てしなく遠い絶望的なものになることは間違いない。さらに世界最強の米軍の指揮系統や配置もズタズタになっていることも忘れてはならない。これらの隙をロシアや中国が見逃すわけがないだろう。前述のジョージ・ルーカスにしてもダイナモ作戦にしても、その自己犠牲的行動は同胞のために行われたものである。人類が国境に囚われ地球人となっていない現状においてアメリカ一国が犠牲になったところで、長期的に見れば世界情勢は混乱へ向かうことは間違いないだろう。ならば彗星を核攻撃し、被害を世界各地に分散させた方がよかったのではないだろうか?少なくともバランスオブパワー理論の観点からは核攻撃案を取るべきであり、世界秩序の保持のためにはそちらの方が有益であると私は考える。

 

 最後に、本作で名前の挙がっていたジョージ・ルーカス氏であるが、翻訳のミスなのか「ジョージ」ではなく「ジャクリン」である。以下に彼についての記述があるページへのリンクをのせておくので、興味のある読者諸氏は是非ごらんいただきたい。

 

http://www5c.biglobe.ne.jp/~odah/i_think/WW2/ioujima8.htm

 

 

総合評価・星3つ(500円の価値有)

★★★☆☆

 

以上