ワンコイン・ムービ-レビュー

ワゴンセール等で500円程度で投げ売りされている映画を愛するブログ

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あらすじ
「群体と化し知能を有したアリが勢力拡大をもくろむ」

 

 本作では大量のアリが出現し、物量攻撃で人間を喰い殺す。それは恐怖というよりも生理的嫌悪感といったほうが適切な表現である。よって虫嫌いの人が本作を視聴することはお勧めできない。私自身、アリの襲撃シーンでは気分が多少悪くなった。週末ゆっくりしようとポテトチップスとライフガードを購入して視聴に臨んだのだが、食欲が見事に促進されたのは素晴らしい誤算であった。

 

 アリにより攻撃を受けた被害者達の姿は実にグロテスクである。主人公の指揮する害虫駆除チームの1人が死亡するシーンでは、アリが防護ヘルメットのバイザー部分を破壊、ヘルメット内部に侵入して隊員を眼球から喰い破って殺害するシーンは見ているだけで身の毛もよだつ。主人公の良きパートナーである爺様も悲惨な目に会う。彼はアリの大群によって防護スーツにダメージを受ける。その損傷個所から入り込んだアリが彼の耳の穴から体内に侵入、神経をジワジワと噛み切って精神にダメージを与えるその攻撃手法は地獄の拷問さながらである。

 

 これだけ丁寧にアリの恐怖を描写しておきながら、その他の設定は実にお粗末である。主人公は「スプレーガンを使ってアリを駆除するぜ」と発言する。殺虫剤でも撒くのかと思いきや、彼が使用するのはどう見てもビームライフルである。青白く発光する波動を連射してアリの大群を撃退する光景は、リアルさという要素をフルスイングで場外に投擲するかのごとき清々しさすら感じさせる。

 

 国家を守る重責を担う防衛大臣は「核兵器を使ってアリを吹き飛ばそう」と知能の欠片すら感じることのできない発言をぶちかます。自国内で核兵器を使用するなどとは、お前はベルカ人かと言いたくなる。なお本作の舞台となった国はゴム園経営と観光業で生計を立てているという設定である。そんな穏やかで小規模な国が核保有国への道を選んだ理性的な理由を是非尋問してみたいところである。

 

 ラストは、耳からアリに侵入された爺様が体に爆弾をくくりつけてアリの巣に自爆攻撃をかけるが、アリは地下で生き残ってるぜと不安感を残してエンドロールである。本作では何故アリが知性を得るに至ったかの説明が不明瞭である。女学者は「主人公の会社がまき散らした殺虫剤のせいよ」と薬害説を主張する一方で、宇宙からやってきた謎の光体がアリを統制している様な暗示もみられる。とにかく本作はストーリーや設定は気にせず、大量にうごめく虫を見たいという一部のマニア以外にお勧めできる作品ではないとだけ言っておきたい。

 


総合評価・星2つ(500円の価値無)
★★☆☆☆

 

以上