ワンコイン・ムービ-レビュー

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ミッション・トゥ・アビス

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あらすじ
暗黒物質を太平洋に不法投棄しに行く」

 

 米軍はアラスカに墜落した隕石から抽出した「アイス10」という未知の化学物質を64本の試験管に入れて保管していた。そのうちの1本をジェット機で輸送中に物質が不安定になりカナダの空港がフッ飛ぶところから物語は始まる。残りの63本が爆発すれば地球は1000年以上死の星になってしまうので厳重に保管して動かすなとの技術顧問の助言に対し「保管場所から石油が出ることがわかったから移動させる」と実にローリスクハイリターンな決定が行われる。

 

 輸送手段として選ばれたのは大型タンカーである。万全を期して出港した彼らを悲劇が襲う。「高波が来るぞ!」この艦長の叫びに続いて船内はパニックに陥る。無理もない事だろう。海に出れば波が来るなどということは誰にも予想することはできない事態なのだから。船長は続いて「神に祈ろう」と呟き首を垂れるが、その時間で理科の教科書を読み海について勉強しておくことをお勧めしたい。結局波が来るたびにアイス10は不安定になってしまう。その度にベント放出などとほざいてアイス10を空気中に開放するのだが、その際発生する黒雲は全てを破壊する力を持ち、護衛の軍艦を消滅させ、無関係の民間クルーザーを巻き込んだあげくハワイを壊滅させる。

 

 この際登場した大佐の活躍は賞賛に値する。科学については門外漢であるにもかかわらずアイス10を安定させようとする技術者を無意味に怒鳴りつけ無駄な命令を出し、それが失敗すればミスを全て技術者に押し付けたあげく技術者のリーダーをぶん殴る。アメリカにブラック企業大賞があればノミネート待ったなしの人材である。なおハワイ壊滅の戦犯も彼である。

 

 進退窮まった米軍は第二案を実行に移す。それは核ミサイルでタンカーを吹き飛ばすという荘厳さすら感じさせる芸術的作戦であった。なおこの際に「馬鹿じゃねーのお前ら」と正論を吐いた技術顧問は銃撃され負傷した。発射された核ミサイルに対してタンカー側は艦載のヘリコプターを飛ばし、これとミサイルを体当たりさせることで危機を回避する。なおこの際使われたヘリはアメリカ海軍のヘリで、操縦士はタンカーの船長であるギリシア人のデブである。一介の民間人が何の訓練も受けずに軍用機に乗り込み、音速以上で飛行するミサイルに対して正確無比な特攻を仕掛けてこれを撃退した光景は、世界がミサイル防衛システム構築のために費やした血税はなんだったのかという軍事学的問題を喚起させずにはいられない。

 

 デブの特攻で稼げた時間を使い、技術陣がアイス10をなんとかすることに成功するもチームの主要メンバーはあらかた殉職してしまう。最後は、核攻撃に反対した技術顧問を銃撃した無能ハゲが合衆国英雄として表彰される中、作戦メンバーが殉職者の墓の前で涙を流すという後味最高の爽やかなシーンで物語は幕を閉じる。

 

 

総合評価・星3つ(500円の価値有)

★★★☆☆

 

以上