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ウイルスX殺人感染

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あらすじ

「ウイルス兵器作ってたら被験者に逃げられて研究者たちが感染するけどご都合主義で助かって出資者のババアをしばく」

 

 大学で細胞学と病理学を研究し、南米ではボランティアで家畜の伝染病の治療にあたった青年研究者が、とある悪徳企業の求人に応募してくる。「弊社は社会のためワクチンを製造しています」。もちろんこれはアレである。このハローワークの求人票の様に信頼性あふれる記載に騙された青年研究者は無事悪徳企業の囲い者となる。

 

 悪徳企業はそこらから兄ちゃんや姉ちゃんを拉致してきてウイルスをぶち込み何日で死ぬか観察する自由研究に夏休みを捧げる。青年研究者と同僚たちは、そんなことはつゆ知らずウイルスの研究に没頭する。そして青年研究者は発見する。「ボス!特異体の存在を確認したで!これはアカンやつや!」もちろん進言は無視され、それどころかボスは「よっしゃ!拉致してきた被験体に特異体をブチこんで観察したろ!」と人道的介入を行う。

 

 しかし被験体はスキを見て逃走する。しかし青年研究者のいるフロアまでたどり着いたものの、シルバーブロンドの長髪とシルバーアクセ、ピチピチ黒タイツで武装した変態警備員に射殺されてしまう。その際に青年研究者と同僚たちは返り血を浴びて感染してしまう。あげくボスと警備員によりフロアは閉鎖されてしまう。

 

 取り残された研究者たちはその知能に比例した冷静沈着対応で視聴者を感心させる。「火をつけたらビビってドア開けるんちゃう?」「焼身自殺で殺菌しよう」「俺だけは感染してないから俺だけは助けてくれ」「私の妹がこんど大学に行くの…彼女に会いたい…」。阿呆、バグ、自己中、泣き落とし。人間とはかくも美しき生き物である。

 

 なんやかんやしていると、ボスが閉鎖を解除してやってくる。「君たちを見捨てられなかった」とは彼の弁であるが、前述したとおり彼は多数の罪なき一般人を被験体にしてなぶり殺しにしてきたハゲである。そんな彼がこのような行動をとることのどこに整合性を感じればよいのだろうか。

 

 ボスは言う。「実はワクチンはあるんだ」。じゃあ封鎖する必要なんてどこにも無かっただろ。設定を自ら崩していく、低予算映画の誇る、誇れない様式美がそこにあった。ワクチンを取りに行こうとすると、その道を阻む変態警備員が!ボス含む2人が殺され、変態警備員は死亡。青年研究者ともう1人だけが生き残りワクチンを接種することに成功する。そして2人は悪徳企業の出資者であるババアを拉致してウイルスを投入して天罰を与えてFinである。

 

 なおこの出資者のババア、なかなかに濃いキャラだったので一応解説しておく。映画開始早々からバスタブにつかりストロベリーをしゃぶるその肢体は、どう擁護しても口紅を塗ったミイラである。彼女は「ウイルスを世界にばらまいた後ワクチンを供給して、私はヒーローで大金持ちになるのよ」と自作自演愉快犯構想を披露してくれる。これも低予算映画業界に言いたいことだが、もうちょっとマシな犯行動機を考えてほしい。

 

 アホみたいな黒幕はいらない。変態警備員も無駄に濃いだけだから普通の警備員でいい。ボスはクソでいい(現実でもそうだろ)。ワクチンは主人公達で開発しろ。この4点を本作への改善案として提出したい。

 

 最後にフォローとして本作の良かったところを述べると、陰鬱な研究所の雰囲気がしっかりしていたところと、ウイルスに感染してドロドロ血を吐いて死ぬグロさである。逃げ場のない閉鎖的な舞台でLet’s 吐血、そんなIt’s a small worldが好きならば本作は暇つぶしになるかもしれない。

 

 

総合評価・星2つ(500円の価値無)

★★☆☆☆

 

以上