ワンコイン・ムービ-レビュー

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T-フォース ベトコン地下要塞制圧部隊

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あらすじ

「アラはあるけど頑張ってる」

 

 私は思った。地下要塞制圧など書いておきながら、なぜパッケージの兵隊は天駆けるヘリコプターの下、川に崩れ落ちているのだろうか。どうせこの映画は適当な「戦争は悲惨なのよ」とバカでもわかることを垂れ流しつつ、ラストはファッキン米帝で終わる量産型反米映画だろうと。

 

 しかし映画の主な舞台となるのは「クチトンネル」という場所である。誤解を恐れずに簡潔に説明すれば「ベトナム戦争中、地下に籠って米兵とガチンコで戦ったモノホンの陣地」である。興味を持った人は検索するとよいだろう。

 

 その中に兵士達が探索・掃討のため潜入する。彼らの装備はピストルと懐中電灯だけ。想像しただけで恐ろしい。実際映像でもそれは表現されている。暗闇から突如放たれた銃弾で腹をえぐられ失血死する兵士、洞窟の中にさらに掘られた落とし穴に引っかかり串刺しになる兵士。流れ込んできた地下水で溺死する兵士。一寸先は闇どころか一寸先は死なのである。送り込まれた兵士はことごとく惨殺され、わずかな生き残りだけが必死の抵抗を続ける。もはや当初の目的である探索・掃討など夢のまた夢である。結局ラストは全滅である。最後に生き残った兵士が洞窟で生き埋め状態になり酸欠で死にゆく中、ランプの中のロウソクが消えてゆくシーンなどはうまい構図であると感じた。

 

 しかし掃討部隊の描写が上手い分、脇の考証が甘いところが残念でならない。具体的には掃討部隊の所属する米軍本隊の描写である。彼らは周囲をジャングルに囲まれた空き地のど真ん中を野営地に選ぶ。こっそり接近してきた北ベトナム兵を歓迎するには絶好のポジショニングである。兵士の身を守る土のうは膝の下までしか無く、マシンガンは棒立ちにならないと使えない位置に設置され射手は絶好の的と化す、兵士達が寝る簡易ベッド周辺は何の守りも無く歩哨も立てていない。完全に役満である。

 

 お待ちかねの北ベトナム兵の歓迎委員会の突入により、野営地の兵士はアホみたいに死んでいく。「ううー」と棒読みで倒れ込むエキストラ達の演技はやる気元気いわきである。もちろん死んだ兵士は復帰しない。指揮官は「頑張るんだ!」と叫んで走り回るだけ。そのくせ結局簡単に戦闘をあきらめ、弾薬集積所で手榴弾を使い自爆、部下を道連れに自爆するマネジメント能力の高さを見せる。死ぬなら1人で死ね。普通、負け戦なら残存兵力をまとめて有利な地形まで後退とか考えるだろうに、アホな位置に陣を張りアホみたいに抵抗をつづけアホみたいに自爆するとはまさしく理想の上司である。

 

 なおベトナム側の描写も変である。北ベトナム軍の軍服はワークマンで売ってそうな黒い作業着でヘルメットは熱でへたったビニール袋のようなわけのわからんものである。ベトコンはベトコンでやたらおしゃれである。黒シャツや編み笠など一切でてこない。その様はまるでコンクリートジャングルのホームレスである。ベトコンというよりはラッパーの様である。「父ちゃん母ちゃんホーチミンに感謝」とか歌ってCD出したら売れるんじゃないだろうか(適当)

 

 最後に1つ気になったシーンを述べておきたい。それは女ベトコンが「竹槍で」米兵を刺殺するシーンである。ちなみに彼女はきちんとしたライフルを持っている。にも関わらずなぜ彼女は竹槍を使用したのか?

 

 ここで1つの仮説が私の中で浮かび上がった。かつて西暦1941年から1945年にかけて南の島で適当に暴れまわったあげく、自国民を320万人も自滅させたビッグジャップエンパイアという国が存在した。この国はジューケンドー(ジークンドーではないので注意)という技を使う勇猛な軍によって多くの敵を倒してきた。書物においても彼らが「チョクトツ」という技によって多くの兵を無駄死にさせたことが記されている。おそらくはベトナムの民にもその共栄圏の思想が受け継がれているのであろう。はだしのゲンの1巻が読みたくなる、そんなシーンであった。何言ってるかわかんねえよボケと言う人がほとんどだと思うので、もし興味があるなら、一ノ瀬俊也著『日本軍と日本兵 米軍報告書は語る』を読めば体育の授業に柔剣道を追加するべきであると考える事間違い無しである。なお上述の本についても「航空・海上優勢を取られた上での日本兵の過小評価は不適当ではないか」と一定の弁護はしておきたい。

 

 ここまで書いて思ったが、今回映画のレビューになってますかね?

 

 

総合評価・星3つ(500円の価値有)

★★★☆☆

 

以上